【名もなき者たち 2014】 展示にあたって 本多 俊一

公開日: : 写真展情報

【名もなき者たち 2014】展示にあたって

6月のフォトニコから早6ヶ月ほど。3階で展示していました本多です。

前記事で告知させていただきました「名もなき者たち 2014」の展示情報に加えて記事もうひとつお借りして、フォトニコでの出品作品との比較をしながら、その制作意図について紹介できたらと思います。

2014年のフォトニコでは例えば、この作品が落札されました。

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フォトニコには何点か出品していたのですが、落札いただけた作品は偶然、今回の「名もなき者たち 2014」の関連作です。そんな観点から振り返ってみると、やはりなにか今回につながるモチーフには意味を感じます。

共通するキーワードとしては、「」を使っているという点です。

なぜ石か。
最初のきっかけは「日本庭園」を撮りに行ったことでした。日本庭園とは、かつては祭祀の場としてはじまり信仰の場、そして社交の場としてその意味を変えながら発展してきた場所ですが、現在の社会においては、「完成した空間」「発展よりも保存と継承」した美学の最終形として隔離された空間と自分は解釈しました。自分はここに日本人の世相を投影して写真を撮っていました。

特に国や都に市区町村に「指定」された庭園空間は、新しい表現を取り入れることをせず、いかに現状維持をするかが重要なポイントのようで、気持ち的に時間が止まった空間だと感じています。なによりも塀で囲って「知っている人しか入れない:大して積極的に集客はしない」隔離感。そんな精神はどこか現代社会の末期的感情のように見えました。

しかし、撮り続けていく過程で徐々に「表層部分を撮っているだけではないか」「うわべだけを追いかけているだけではないか」と感じるようになり、テーマを踏まえた上でその先に踏み込むような、もっとコアな部分にフォーカスしていくにはどうしたらいいか、と考えるようになりました。そこで「日本庭園」というモチーフを分解することにしてみたのです。日本庭園にはざっくりと分けて「石」「水」「植物」があり、これをいかに配置させ空間を作るか、が命題なのですが、そこで、その中から「石」に注目しました。

それが6月のフォトニコ、9月の御苗場関西とつながっていくわけですが、始めた当初は河原で拾った石を持ち帰り、セットを組んでライティングをして撮影したものを加工していました。

そうして撮り始めたものの、どうも不自然さを抱いてしまい、最終的に「その場で撮る」ことにしました。

ある程度まとまった数をこなすということが必要な要素としてあると気がついたので、まずは多摩川の河川敷で約1,000個を確保しました。

何万個と散らばる中から、1個の個体を拾っては撮り拾っては撮りを繰り返していくと、素材の採集というより、次第に対話になっていきます。そんな印象があって今回の構図スタイルにたどりつくことになりました。

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一点突破、全面展開」という言葉を高校生の頃のある授業で教わりました。大きな展開をするには、力を分散せずに一点に集中して臨むのが良い。そんな概念です。

あれもこれも、どれもそれも、いろんなことが溢れるように迫ってくる今の社会の中で、物事一点一点にちゃんと向き合っていく、そんなことは時代に関係なく必要そうなことなのですが、今だからこそ、このアートの社会的意義として、そんな気持ちを媒介できるような作品があったらいいのでは、と思っています。

もともと日本人は、自然物や時間が蓄積されたモノに神を感じるアニミズムの文化意識があるので、自分自身がそういうことに引っ張られてきたのかもしれません。

まして多摩川の下流にある「石」という物体そのものは、パッと出現したものではなく、長い時間をかけて様々な状況を経て形成されたどり着いてきたという存在感があり、2014年9月の御苗場関西ではいろんな方に見て頂いて話を聞いていく中で「時間」「時間の蓄積」という言葉を多く聞きました。

自分よりも圧倒的に長い歴史が凝縮された媒体を目の前にすることで、感じ入れる、アイコニックなものになれれるのかもしれません。

本作は、御苗場関西出展作とデータは同じですが、今回、イメージングスクエア銀座で展示するのは、モノクロになっていて、マットの幅だけではなく、紙の地も広く見せるように展開しています。

御苗場関西の場で得たことを元に、よりいっそう「時間」そして「没入」ということに意識を向けています。カラー版の制作でもすでに必要最低限まで色を調整していたつもりですが、やはり良くも悪くも色味があるとその温度で呼吸が乗ってしまいます。御苗場という大規模で賑やかなグループ展ではそのくらいでいいのですが、もっと落ち着いた空間であれば、もっと絞ってみたいと思いました。

静かに呼吸を落ち着けて見てもらえると幸いです。

また、山本”KUMA”大介さん、高倉 大輔さんなど他にもこれまでのフォトニコ出展者で今回参加している期待の新人作家がいます。そして他の出展者もそれぞれ独創的かつ力のある作品を作られている方たちばかりなので、必見です。

本多 俊一

 

写真展「名もなき者たち 2014」

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開催情報>> 写真展 【名もなき者たち 2014】 ギャラリーA.W.P

お問い合わせ>> リコーイメージングスクエア銀座

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    ・点数:32点
    ・総額:365,200円
    (Tokyo Institute of Photography)

    <2015年>
    ・点数:191点
    ・総額:1,225,956円
    (渋谷ギャラリー・ルデコ)

    <2014年>
    ・点数:141点
    ・総額:1,233,925円
    (渋谷ギャラリー・ルデコ)

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